※2026年9月6日時点の公開情報をもとにしています。屋根の状態や施工の可否は、必ず専門業者の現地調査で確認してください。
札幌の戸建てに多い「無落雪屋根(スノーダクト)」で、冬になると増えるのがすが漏り(すが漏れ)です。屋根が傷んでいなくても、晴れて冷え込む厳冬期に天井から水が落ちてくる——普通の雨漏りとは原因が違うため、去年まで平気だった家でも突然起きます。この記事では、すが漏りの仕組み、9月〜11月の「雪が降る前」にできる点検、そして自分で屋根に上ってはいけない理由と費用の考え方を、宅建士 Akira.N が公的資料をもとに整理します。
結論:すが漏りは「屋根の故障」ではなく「熱と雪の現象」
すが漏りは、屋根材の割れや経年劣化だけが原因で起きる普通の雨漏りとは別物です。室内の暖気で屋根の上の雪が下から解け、その水が軒先やダクトの冷たい部分で再び凍って氷の堤(=「すが」)をつくり、せき止められた水が屋根材の継ぎ目や立ち上がりを越えて室内側へ回り込みます。つまり屋根が健全でも、断熱・気密や排水の条件次第で発生するため、次の3点を先に押さえてください。
- 雨の日ではなく、晴れて冷え込む1〜2月に多い。だから「雨漏り」と思わず見逃しやすい
- 原因は屋根単体ではなく「室内の熱」「雪」「排水(ドレン)の詰まり」の組み合わせ
- 点検で屋根に上る作業は、北海道で毎年死者が出るほど危険。高所作業は自分でやらない
札幌市で無落雪屋根が広く使われているのは、屋根から雪を落とさず敷地内で処理できるからです。裏を返すと、雪を屋根の上で融かして流す設計なので、その「融かす・流す」が滞るとすが漏りにつながります。
無落雪屋根で「すが漏り」が起きる仕組み
札幌に多いスノーダクト式の無落雪屋根は、屋根の中央や谷にあたる部分に水を集める樋(ダクト)があり、そこから縦樋・ドレン(排水口)を通じて融雪水を下ろす構造です。雪を落とさないかわりに、屋根の上で解けた水を集めて排水する前提で成り立っています。ここで次のことが重なると、すが漏りになります。
| 段階 | 屋根で起きていること | 点検で見る場所 |
|---|---|---|
| ①融雪 | 室内から屋根裏へ抜けた熱で、雪が接する面(屋根の上側)から解ける | 屋根裏の断熱・気密、天井の暖気だまり |
| ②再凍結 | 解けた水が軒先やダクトの縁など冷たい部分で再び凍り、氷の堤(すが)になる | 軒先・ダクトの縁のつらら、氷の盛り上がり |
| ③せき止め | 氷の堤で水がせき止められ、水位が上がる | ダクト内の水位、ドレン周りの氷 |
| ④浸入 | 水が屋根材の継ぎ目や立ち上がり(わたり)の防水を越えて室内側へ回り込む | 天井・壁のシミ、クロスの浮き、窓上の変色 |
さらに、ダクトの底やドレン(排水口)が落ち葉・ゴミ・氷で詰まると、融けた水の行き場がなくなり、屋根の上に水がたまって同じように溢れます。「屋根材は無事なのに漏る」「毎年同じ場所から漏る」のがすが漏りの特徴で、雨天時に漏る一般的な雨漏り(屋根材の割れ・防水の劣化・板金の浮きなど)とは対処の入り口が違います。判断がつかないときは、雨漏りとすが漏りの両方を切り分けられる業者に、屋根に上らずに済む範囲の一次調査から相談するのが安全です。
雪が降る前(9〜11月)にできる一次点検
すが漏りは、起きてから真冬に直そうとすると、屋根に雪が載っていて手が付けられません。対策は「雪が降る前」の秋が要です。地上や室内からでも確認できることは次のとおりです。
- 去年の痕跡を室内から探す:天井・壁のシミ、クロスの浮きや剥がれ、窓の上の変色、押入れやクローゼット天井のカビ。去年の冬に一度でも出ていれば、今年も同じ場所で再発しやすい
- ダクト・ドレンの詰まりを疑う:落ち葉やゴミが排水口にたまっていないか。ここは屋根上の作業になるため、目視できる範囲にとどめ、詰まりが疑われるなら業者に清掃を依頼する
- 屋根裏の断熱・気密を確認する:点検口から見て、断熱材のずれ・へたり、天井の隙間から暖気が上がっていないか。室内の熱が屋根に届くほど、屋根の雪が解けてすが漏りが起きやすい
- 防水層と板金の状態を業者に見てもらう:ダクトの継ぎ目、わたり(立ち上がり)の防水、板金の浮き。ここは専門業者の現地調査の領域
①②③は所有者が室内・点検口・地上から確認できます。④と、②で詰まりが疑われた場合の屋根上作業は、無理をせず専門業者に任せてください。多くの屋根・雨漏り業者は、現地調査と見積もりを無料と案内しています。書面で受け取ってから、直すかどうかを判断すれば十分です。
「自分で屋根に上って点検・雪下ろし」がなぜ危険か
すが漏りを見つけると、つい自分で屋根に上って氷を割ったり雪を下ろしたりしたくなりますが、これは北海道で毎年死者が出ている作業です。北海道(総務部危機対策局危機対策課)がまとめた令和7年度(2025年11月〜2026年3月)の「雪による被害状況」(2026年4月8日発表・速報値)では、道内の死傷者は175人(死者10人、重傷34人、軽傷131人)でした。原因の内訳は次のとおりです。
| 事故の原因 | 人数 | 割合 |
|---|---|---|
| 屋根からの転落 | 45人 | 25.7%(最多) |
| はしごからの転落 | 35人 | 20.0% |
| 落氷雪 | 23人 | 13.1% |
| 除雪機による事故 | 12人 | 6.9% |
| その他 | 60人 | 34.3% |
| 合計 | 175人 | 100.0% |
屋根からの転落とはしごからの転落を合わせると80人(45.7%)で、被害のほぼ半分が屋根まわりの高所作業です。年齢別では65歳以上が71.4%、うち75歳以上が81人(46.3%)を占めます。札幌を含む石狩振興局でも死者3人・重傷6人・軽傷51人が記録され、札幌市では除雪作業中に屋根から転落した死亡例が複数報告されています(同資料の死者発生状況)。
すが漏りの点検・対処のために屋根に上るのは、この統計に自分を加えに行くようなものです。氷や雪で足場が悪いうえ、屋根の縁で作業するため、転落のリスクが最も高い状況になります。屋根の上・はしごでの作業は、装備と経験のある業者に任せる——これが費用よりも先に決めるべきことです。現地調査だけなら無料で対応する業者が多いので、まずは状態を見てもらってください。
雨漏りは放置すると天井や壁の内部で腐朽やカビが進み、修理範囲が広がります。屋根の上は自分で確認できないため、まず現地調査で原因箇所を特定してもらい、見積もりの内訳(原因調査・補修範囲・保証)を書面で受け取ってから判断してください。
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費用は「相場」ではなく「見積もりで確認する項目」で考える
すが漏りの修理費は、原因がどこにあるか(排水の詰まりだけか、防水層の劣化か、断熱・気密まで手を入れるか)で大きく変わり、ひとつの相場で語れません。手書きの概算金額を鵜呑みにせず、見積もりで次の項目がどう見積もられているかを確認してください。
| 費用が変わる要因 | 影響 | 見積もりで確認すること |
|---|---|---|
| 原因の深さ | ドレンの詰まり除去だけか、防水層の張り替えか、断熱改修まで及ぶかで桁が変わる | 「応急処置」か「原因を断つ工事」か、どちらの見積もりか |
| 足場・雪の状況 | 屋根の高さ・形状、施工時期(雪の有無)で足場や安全対策の費用が変わる | 足場費が含まれるか、着工できる時期はいつか |
| 防水の範囲 | 部分補修か、ダクト全体・わたりまで含むかで面積が変わる | 補修範囲の図示、保証年数の有無 |
| 断熱・気密の扱い | 根本対策として天井断熱・気密に踏み込むと工事は増えるが再発を抑えられる | 今回の工事に含むか、別途か。補助金の対象か |
| 付帯工事 | 傷んだ天井・断熱材・内装の復旧が必要になることがある | 復旧費が別計上か込みか |
費用を適正に判断する現実的な方法は、1社の言い値で決めず、複数の業者の現地調査と見積もりを横に並べて比べることです。無料調査を使えば、金額の負担なく複数の見立てを集められます。応急処置と根本対策のどちらを勧めているか、足場や保証がどう入っているかを見比べると、極端に安い/高い見積もりの理由が見えてきます。
根本対策は「断熱・気密」と「防水・排水」の両輪
すが漏りは室内の熱で屋根の雪が解けることが引き金なので、その場の防水補修だけでは再発することがあります。再発を抑える根本対策は、大きく次の2方向です。
①屋根に熱を届けない(断熱・気密の強化)
天井の断熱を厚くし、気密層で室内の暖気が屋根裏へ抜けるのを抑えると、屋根面での融雪そのものが減り、すが漏りが起きにくくなります。断熱改修は暖房費の低減にもつながるため、冬の光熱費対策と一体で検討する価値があります。北海道の住まいの断熱の考え方は北海道の住宅の断熱等級の記事、暖房と熱源の負担は道内の古い家の暖房費の記事で整理しています。
②水をためない・凍らせない(防水・排水の更新)
防水層(シート・塗膜)の更新、わたり(立ち上がり)の防水強化、ダクト・ドレンの清掃や、状況によってはドレン部のヒーターの設置など、「水をためない・凍らせない」方向の工事です。屋根形状や築年数によって適する工法が変わるため、現地調査で複数案を出してもらいます。
断熱改修には、時期によって札幌市や国の補助制度が使えることがあります。年間の受付時期は札幌の住宅補助金カレンダーの記事、省エネ改修の補助は札幌のエコリフォーム補助の記事にまとめています。補助金は予算に達すると締め切られるため、工事の前に対象と締切を確認してください。
同じ工事でも、会社によって見積もり額は2〜3割変わることがあります。先に相場を知っておくと、提示された金額が妥当かどうか自分で判断できます。
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売買・中古購入で見落とさないための宅建士メモ
すが漏りは、住んでいる人だけでなく、家を売る人・中古で買う人にも関わります。
- 中古の内見時:無落雪屋根の家では、天井・壁のシミ、窓上の変色、押入れ天井のカビなど、すが漏りの痕跡を室内から確認します。冬以外の内見では痕跡が乾いて見えにくいので、売主や仲介に「すが漏りの履歴があるか」を明確に聞くのが確実です。内見で見るべき点は中古住宅の内見にかける時間の記事を参考にしてください
- 売却時:過去のすが漏りや雨漏りの履歴は、買主に伝えるべき告知事項になり得ます。隠して売ると、引き渡し後のトラブル(契約不適合責任)につながります。放置して天井・断熱材まで傷むと査定にも響くため、売る前に状態を把握しておくことが有利に働きます
- 近隣関係:札幌市では、建築基準法施行条例第12条で、屋根からの氷雪落下による危害を防ぐ措置(雪止めなど)が定められています。ただし市は「確認済証等の発行が氷雪の落下しないことを確約するものではない」としており、屋根まわりの管理は所有者が継続して負う責任です(同条例の説明、2025年4月1日時点)。落雪・落氷が隣地や道路に及ぶと近隣トラブルになるため、すが漏り点検の際に軒先の状態も一緒に見てもらうとよいでしょう
屋根や雪の負担は、物件選びの段階から効いてきます。除雪や雪処理の観点での物件の見方は札幌の除雪と物件選びの記事で扱っています。
よくある質問
去年まで漏らなかったのに、今年からすが漏りが出るのはなぜですか
すが漏りは屋根材の劣化だけでなく、その年の雪の量・冷え込み方、室内の暖め方、ドレンの詰まりなど複数の条件が重なって起きます。屋根が去年と同じでも、条件が変われば発生します。逆に、断熱・気密や排水を改善すると、屋根を全面的に替えなくても起きにくくできます。
すが漏りかどうか、自分で見分けられますか
晴れて冷え込む厳冬期に、屋根が傷んでいないのに毎年同じ場所から漏るならすが漏りの可能性が高いですが、屋根材の劣化による雨漏りと併発していることもあります。切り分けには屋根まわりの調査が要るため、両方を見られる業者の現地調査(多くは無料)で確認するのが確実です。
火災保険は使えますか
使えるかどうかは契約内容と原因によります。風災・雪災の補償範囲や免責金額は保険ごとに異なり、経年劣化とみなされると対象外になることもあります。まず保険証券で補償内容を確認し、修理業者と保険会社の双方に、原因と対象になるかを確認してください。金額や可否をこの記事で断定はできません。
まとめ
札幌の無落雪屋根に多いすが漏りは、屋根の故障ではなく「室内の熱・雪・排水の詰まり」が重なって起きる冬の現象です。だから屋根が健全でも発生し、対策は雪が降る前の秋が要になります。まずは室内・点検口・地上からできる一次点検で去年の痕跡と詰まりを確認し、屋根の上やはしごでの作業は——北海道で毎年死者が出ている作業ですから——無料の現地調査を使って業者に任せてください。費用は相場で決めず、複数社の見積もりを「原因の深さ・足場・保証・断熱の扱い」で見比べる。根本対策は断熱・気密と防水・排水の両輪で考え、断熱改修は補助金の時期も合わせて検討する——この順番が、札幌の冬を安全に乗り切る近道です。
出典:北海道 総務部危機対策局危機対策課「雪による被害状況(北海道)」令和8年4月8日発表・速報値(令和7年11月〜令和8年3月)/札幌市「氷雪の落下による危害を防止するための措置について」(札幌市建築基準法施行条例第12条、2025年4月1日時点)(いずれも確認日2026年9月6日)
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