介護のためのリフォームで最初に押さえるべきは、工事の中身より制度の順番です。介護保険の住宅改修は、工事前に申請しないと支給されません。先に工事をしてしまって受けられなかった、という相談が毎年あります。
もう一点。介護保険の住宅改修は支給限度基準額が20万円で、実際に戻るのはその1〜3割の自己負担を除いた額です。「20万円もらえる」わけではありません。まずここを正確に理解してから、工事の範囲を決めてください。
制度は3層で考える
| 制度 | 使える条件 | 金額 |
|---|---|---|
| 介護保険の住宅改修費 | 要支援・要介護の認定を受けている | 支給限度基準額20万円(自己負担1〜3割) |
| 札幌市住宅エコリフォーム補助制度 | 札幌市民。認定は不要 | 総工事費(税抜)の10%または50万円のいずれか少ない額 |
| バリアフリー改修の減税 | 要件を満たす場合 | 所得税・固定資産税で優遇 |
この3つは目的も窓口も別です。介護保険は各区役所の保健福祉課、エコリフォームは郵送でエコリフォーム事務局、減税は税務署と市区町村。ひとつの工事で複数使える場合がありますが、同じ箇所での重複はできません。
1. 介護保険の住宅改修費
対象になる工事は6種類
- 手すりの取付け
- 段差の解消
- 滑りの防止・移動の円滑化等のための床材の変更
- 引き戸等への扉の取替え
- 洋式便器等への便器の取替え
- 上記の工事に付帯して必要となる工事
▶ 関連記事:介護を見据えたトイレ機種の選び方と交換費用
手続きの順番を絶対に間違えない
- ケアマネジャーに相談——住宅改修が必要な理由書を作成してもらいます
- 事前申請——工事前に区役所へ書類を提出(見積書、図面、工事前の写真、理由書など)
- 承認を受けてから着工
- 工事完了後に支給申請——領収書、工事後の写真を提出
2の事前申請を飛ばすと、原則として支給されません。「急いでいたので先に工事をした」は通りません。緊急でやむを得ない場合の取扱いは自治体によるため、事前に区役所に確認してください。
20万円の使い方
支給限度基準額の20万円は、1人につき生涯で20万円です。ただし複数回に分けて使うことができます。今回10万円分、状態が変わってから残り10万円分、という使い方が可能です。
また、要介護度が3段階以上上がった場合や、転居した場合は、再度20万円分を利用できる仕組みがあります。将来を見越して、最初に全部使い切らない選択も検討に値します。
2. 札幌市住宅エコリフォーム補助制度
介護認定がなくても使えるのがこちらです。バリアフリー関連では次の工事が対象になります。
- 浴室の改良——浴室全体の改修で90,000円/か所
- 便所の改良——便器取替えで21,000円/か所
- 階段の改良(屋内)——58,000円/か所
- 段差の解消、廊下の拡幅、出入口の戸の改良、玄関前スロープの設置
- 手すりの新設——3,000〜9,000円/か所
上限は総工事費(税抜)の10%または50万円のいずれか少ない額。下限は補助金額の合計3万円以上かつ総工事費30万円以上です。
第1回受付は2026年5月22日〜6月4日で終了しており(抽選日6月10日)、残るは第2回(2026年9月4日〜9月17日)です。郵送のみで、申請が予定額を超えると抽選になります。施工業者は建設業許可があり札幌市内に主たる営業所を有することが条件。この制度は交付決定前に着工できます(工事前写真が必須)。介護保険とは着工のルールが逆なので注意してください。
3. 減税
所得税(バリアフリー改修)
ローンを組まない場合でも使える投資型減税では、バリアフリー改修の控除対象限度額は200万円、最大控除額は20万円(10%部分)です。適用期限は令和10年12月31日までに居住を開始した場合。
計算のもとになるのは実際の工事費ではなく、国が定める「標準的な工事費用相当額」で、これが補助金等を差し引いて50万円超であることが必要です。
固定資産税
バリアフリー改修では、翌年度分の固定資産税から3分の1が減額されます(税額は3分の2になります)。主な要件は次のとおりです。
- 申請者が65歳以上(工事完了翌年の1月1日時点)、または要介護・要支援認定者、障がい者のいずれか
- 新築後10年以上経過している
- 賃貸住宅でない
- 補助金を差し引いた工事費が50万円(税込)超
- 改修後の床面積が40㎡以上240㎡以下
申告は工事完了日から3か月以内に市区町村へ。確定申告とは別の手続きです。なお、バリアフリー改修の固定資産税減額について必要な証明書は自治体によって異なるため、札幌市の場合は各区の税務課に確認してください。
札幌で考えるべき冬の動線
バリアフリーというと室内の段差や手すりに目が行きますが、札幌では屋外の動線のほうが危険です。
- 玄関前のアプローチ——凍結すると、スロープはかえって滑りやすくなります。勾配を緩くする、融雪を入れる、手すりを付けるなどの組み合わせで考えます
- 玄関の風除室——雪や冷気を室内に持ち込まない。段差解消と同時に検討すべき部分です
- 駐車スペースから玄関まで——除雪の負担が本人にかかる場合、ここが実質的な生活のボトルネックになります
- 屋根からの落雪の位置——動線と重なっていないか
室内を完璧にしても、冬に玄関から出られなければ生活は成り立ちません。屋外を含めて動線全体で考えてください。融雪施設については、札幌市に設置資金の融資あっせん制度(300万円まで無利子)があります。
よくある質問
Q. 工事をしてから介護保険に申請できますか?
A. 原則としてできません。事前申請が必要です。緊急の場合の取扱いは自治体によって異なるため、着工前に区役所の保健福祉課に確認してください。
Q. 20万円が全額もらえますか?
A. 20万円は支給限度基準額です。実際に支給されるのは、自己負担割合(1〜3割)を除いた額になります。
Q. 介護保険と札幌市エコリフォームは併用できますか?
A. 制度が別なので併用の余地はありますが、同じ工事箇所での重複はできません。トイレは介護保険、浴室はエコリフォーム、というように箇所を分ける形になります。事前に両方の窓口に確認してください。
Q. 介護認定を受けていませんが使える制度はありますか?
A. 札幌市エコリフォーム補助制度は介護認定を必要としません。減税についても、バリアフリー改修の固定資産税は「65歳以上」でも対象になります。
Q. 手すりはどこに付けるべきですか?
A. 一律の正解はありません。実際の動作を見て決めるものなので、ケアマネジャーや福祉住環境の専門職に同行してもらい、本人が動く様子を確認したうえで位置を決めてください。カタログ的に付けても使われないことがあります。
2026年に使える補助制度の全体像はリフォーム補助金2026【札幌・北海道版】、減税の整理はリフォームで使える減税は3つをご覧ください。
まとめ
- 介護保険の住宅改修は必ず事前申請。工事後では原則支給されない
- 支給限度基準額20万円は生涯の枠だが、分割して使える。最初に使い切らない選択もある
- 介護認定がなくても札幌市エコリフォームが使える。第2回は9月4日〜9月17日
- 札幌市エコリフォームは交付決定前に着工できる。介護保険とは逆なので混同しない
- 固定資産税は翌年度分から3分の1が減額。工事完了から3か月以内に市区町村へ
- 札幌では屋外の動線(玄関前・除雪・落雪)のほうが危険。室内だけ整えても足りない
介護のためのリフォームは、制度の順番を間違えると使えるはずのお金が使えなくなります。ケアマネジャーへの相談を、業者選びより先に置いてください。
▶ あわせて読みたい: リフォーム一括見積もりサービス比較|宅建士が選ぶ失敗しない使い分け



コメント