ホームインスペクション(既存住宅状況調査)とは|宅建業法の位置づけ・わかること・札幌で追加確認したい点を宅建士が解説

ホームインスペクション(既存住宅状況調査)とは|宅建業法の位置づけ・わかること・札幌で追加確認したい点を宅建士が解説中古住宅・マンション購入

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中古住宅の購入で耳にする「ホームインスペクション」は、宅建業法上は「建物状況調査(既存住宅状況調査)」という制度に位置づけられています。誰が、どこを、どこまで見るのかを知らずに依頼すると行き違いが起きます。結論を3行でまとめます。

  • 建物状況調査は、国の登録講習を修了した建築士(既存住宅状況調査技術者)が、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分を目視・計測・非破壊で調べるものです。
  • 欠陥の有無を保証するものではなく、隠れた部分や設備は原則対象外です。何がわからないかを理解したうえで使う制度です。
  • 札幌では凍害・無落雪屋根・断熱・ボイラーといった寒冷地固有の点を追加で見てもらう相談を、申込み後から契約前の間に行うのが現実的です。

宅建業法における建物状況調査の位置づけ

国土交通省によると、2018年(平成30年)4月1日の改正宅建業法施行により、既存住宅の取引で宅建業者に3つの対応が義務づけられました(2026年9月10日確認)。

  1. 媒介契約時:建物状況調査を実施する者のあっせんの可否を媒介契約書に記載し、依頼者の意向に応じてあっせんを行う。
  2. 重要事項説明時:建物状況調査を実施しているかどうか、実施している場合はその結果の概要を説明する。
  3. 売買契約時:建物の構造耐力上主要な部分等の状況について、当事者双方が確認した事項を契約書面(37条書面)に記載して交付する。

重要事項説明の対象となるのは、一定期間内に実施された調査です。宅建業法施行規則の改正により2024年(令和6年)4月1日から、鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の共同住宅等については「2年以内」、それ以外(木造戸建てなど)は従来どおり「1年以内」に実施された調査が説明対象とされています(公益社団法人日本建築士会連合会の案内および宅建業法施行規則第16条の2の2、2026年9月10日確認)。

ここで押さえておきたいのは、宅建業者に義務づけられているのは「あっせん」と「説明」であって、調査そのものの実施義務はないことです。調査をするかどうかは、売主・買主が決めます。重要事項説明で確認すべき項目全体は重要事項説明のチェックリストで整理しています。

調査する人と調査する部位

建物状況調査を行えるのは、国土交通大臣の登録を受けた機関が実施する「既存住宅状況調査技術者講習」を修了した建築士です。国土交通省の案内では、登録講習機関として住宅瑕疵担保責任保険協会や日本建築士会連合会など5機関が挙げられ、調査業務には建築士事務所の登録が必要とされています(2026年9月10日確認)。依頼先が既存住宅状況調査技術者であるか、修了証の番号や登録講習機関名で確認してください。

調査部位は、国が定めた既存住宅状況調査方法基準に基づき、次の2つに大別されます(国土交通省「建物状況調査(インスペクション)活用の手引き」、2026年9月10日確認)。

区分主な部位調べる内容の例
構造耐力上主要な部分基礎、柱、壁、床組、屋根など建物を支える部分ひび割れ、傾き、腐朽、蟻害の痕跡、たわみ
雨水の浸入を防止する部分屋根、外壁、開口部の建具や枠、屋内の排水管など雨漏りの跡、シーリングの劣化、外壁の割れ、水漏れ

調査方法は目視や計測、非破壊検査が基本で、建物を壊して中を見ることはしません。調査時間は建物規模にもよりますが、同手引きでは1〜3時間程度とされています。

調査でわかること・わからないこと

国土交通省の手引きは、建物状況調査が「瑕疵の有無を判定するものではない」こと、「すべての瑕疵を発見することを保証するものではない」こと、調査できない箇所は省略され得ることを明記しています(2026年9月10日確認)。この前提を踏まえると、期待できることと期待できないことは次のように整理できます。

  • わかること:目視・計測できる範囲での劣化事象の有無と程度、雨漏りや傾きの兆候、外部から見える基礎や外壁の状態、点検口から確認できる床下・小屋裏の状態。
  • わからないこと:壁や天井の内部など隠れた部分、点検口がなく進入できない床下や小屋裏、給湯器・キッチンなどの設備機器の性能や余命、耐震性能の数値評価、土地の地盤や境界。

とくに設備と耐震は、別の調査や診断が必要な領域です。耐震性については1981年・2000年の耐震基準の見分け方をあわせてご覧ください。

床下・土台の劣化は「見える範囲」に限られる

建物状況調査で床下を見る場合、点検口から目視できる範囲が対象です。土台や大引の腐朽、シロアリの蟻道や食害の痕跡が見つかることはありますが、点検口がない、あるいは床下の高さが足りず進入できない家では、状況を把握できないまま調査が終わることがあります。床下の湿気による木部の腐朽は寒冷地でも起こり得ます。床下に関して疑問が残ったときは、床下専門の調査を別に入れる方法があります。

シロアリの被害は床下で進むため、気づいたときには柱まで傷んでいることがあります。まず現状を見てもらうだけでも判断材料になります。

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既存住宅売買瑕疵保険との関係

既存住宅売買瑕疵保険は、引渡し後に構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防止する部分に瑕疵が見つかった場合の補修費用等を対象とする保険で、加入には保険法人の検査に合格することが必要です。国土交通省の手引きでは、瑕疵保険の検査は建物状況調査と併せて実施できるとされ、住宅瑕疵担保責任保険協会は、所定の講習を修了した技術者による検査であれば保険法人の現場検査を省略できると案内しています(いずれも2026年9月10日確認)。

実務上の順番としては、「建物状況調査で現状を知る」→「保険に加入できる状態か(補修が必要か)を確認する」→「契約条件に反映する」という流れになります。契約後に不具合が見つかったときの責任関係は契約不適合責任の記事を参照してください。

札幌・道内で追加して見てほしい点

調査方法基準は全国共通のため、寒冷地固有の劣化は依頼時に伝えて重点的に見てもらうのが現実的です。

  • 基礎の凍害:寒地土木研究所の手引書によると、凍害はコンクリート中の水分の凍結と融解の繰り返しで組織が劣化する現象で、表面がフレーク状に剥がれるスケーリング、ひび割れ、骨材に起因するポップアウトなどの形で現れます(2026年9月10日確認)。基礎の表面剥離や地図状のひび割れがあれば、単なる経年のひびとは区別して評価してもらいます。
  • 無落雪屋根とすが漏れ:札幌の住宅に多い無落雪屋根は、屋根に雪を載せたまま溶けた水をダクトで排水する構造です。排水部や軒先で再凍結すると水が滞留し、屋根の継ぎ目から室内へ浸入する「すが漏れ」が起こります。夏の調査では雨漏り跡として残るかどうかが手がかりになるため、天井のしみやダクト周りの状態を重点的に見てもらってください。詳しくはすが漏れの記事で解説しています。
  • 断熱と気密:断熱材の有無や厚み、窓の仕様は調査方法基準の直接の対象ではありません。小屋裏点検口から断熱材の状態を見てもらう、窓の種類を記録してもらうなど、可能な範囲の確認を依頼します。
  • 暖房ボイラー・給湯器:設備機器は調査対象外ですが、製造年と設置年、灯油タンクの状態、配管の凍結防止措置は現地で確認できます。交換時期が近いなら購入後の資金計画に組み込みます。
  • 雪の影響:積雪期は基礎や外壁の下部、屋根面が雪で隠れ、目視できる範囲が狭くなります。調査時期が冬なら、見られなかった部位を報告書に明記してもらい、必要なら雪解け後に補足調査を検討します。

依頼のタイミングと売主が拒否した場合

買主が調査を行うには売主の同意が必要です(国土交通省手引き、2026年9月10日確認)。現実的なタイミングは、購入申込みを出して条件交渉に入った後、売買契約を結ぶ前です。契約後では結果を契約条件に反映できません。日程は仲介会社を通じて売主と調整し、可能なら調査に立ち会ってください。

売主が調査を拒否した場合、拒否そのものは違法ではありません。判断の材料としては、拒否の理由(居住中で日程が合わない、過去に調査済みで報告書がある、など)を確認すること、売主側で1年以内(RC造等の共同住宅は2年以内)に実施した調査があれば重要事項説明で結果の概要を受けられること、既存住宅売買瑕疵保険の付保の可否や契約不適合責任の期間・範囲で調整できるかを検討することが挙げられます。内見時に自分で確認できる範囲は内見チェックリストにまとめています。

費用が変わる要因

調査費用は事業者ごとに設定されており、この記事では金額を示しません。見積もりを比べるときは、次の要因ごとに含まれる内容を確認してください。

要因費用に影響する理由確認すること
建物の規模・階数調査部位と時間が増える延床面積の区分と追加料金の基準
構造・形式戸建てとマンションで調査部位が異なるマンションは専有部分のみか、共用部分の目視を含むか
床下・小屋裏への進入点検口からの目視か、進入調査かで手間が変わる進入の可否、進入できない場合の扱い
機器を使う調査床の傾斜計測、鉄筋探査、赤外線などのオプション基本料金に含まれる計測の範囲
瑕疵保険対応保険法人の検査基準に沿った検査・書類作成保険申込みまで対応できるか
報告書の内容写真枚数、所見の詳しさ、説明時間報告書のサンプル、口頭説明の有無
出張距離・時期札幌市外や積雪期の移動出張費の有無、冬期の対応範囲

購入にかかる諸費用全体の中での位置づけは中古住宅購入の諸費用の記事で確認できます。

よくある質問

不動産会社があっせんする調査者に頼むべきですか

宅建業者にはあっせんの可否を示す義務がありますが、依頼先を限定する義務はありません。あっせんを受けても、自分で探した既存住宅状況調査技術者に頼んでも構いません。国土交通省や登録講習機関の技術者検索ページから対応地域を確認して選ぶ方法があります。

新耐震の家でも調査は必要ですか

建物状況調査は耐震性能を評価するものではなく、現在の劣化状況を調べるものです。築年数が浅くても雨漏りや床下の腐朽は起こり得るため、建築年だけで不要と判断するのは早計です。耐震性が気になる場合は別途耐震診断を検討します。

報告書に問題が書かれていたら購入をやめるべきですか

報告書は補修の要否を判断するための参考情報であり、欠陥の有無を判定するものではありません。指摘された事象の補修方法と費用を施工会社に見積もってもらい、価格交渉・売主負担の補修・瑕疵保険の付保と比べて判断します。

まとめ

ホームインスペクション(建物状況調査)は、既存住宅状況調査技術者が構造と雨水浸入に関わる部分を目視・計測で調べる制度で、宅建業法上はあっせん・重要事項説明・契約書面の3場面で扱われます。すべての瑕疵を見つける調査ではないこと、設備や隠れた部分は対象外であることを理解したうえで、札幌では凍害・すが漏れ・断熱・ボイラーを追加で確認してもらい、申込み後から契約前の間に実施してください。売主が応じない場合は、既存の調査結果、瑕疵保険、契約条件の3点で代替できるかを検討します。

参考にした情報源

  • 国土交通省「建物状況調査(インスペクション)活用の手引き」(2026年9月10日確認)
  • 国土交通省「既存住宅状況調査技術者講習制度について」(2026年9月10日確認)
  • 国土交通省 住まいの安心総合支援サイト「インスペクション」(2026年9月10日確認)
  • 公益社団法人日本建築士会連合会「宅地建物取引業法施行規則等の改正について(令和6年)」(2026年9月10日確認)
  • 一般社団法人住宅瑕疵担保責任保険協会「既存住宅状況調査(建物状況調査)とは?」(2026年9月10日確認)
  • 国立研究開発法人土木研究所 寒地土木研究所「凍害が疑われる構造物の調査・対策手引書(案)」(2026年9月10日確認)

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